今回は「コンサル1年目が学ぶこと」という1冊をご紹介したいと思います。本のタイトルだけを見ると、コンサルタントの仕事をしている人向けの本のように思えますが、実際のところはビジネスパーソンであれば誰しもが身につけておきたい汎用的なスキルや心得について解説されています。そのため、ビジネススキルを高めたいと感じている方にとってはぜひ読んでいただきたい1冊です。
ビジネススキル30個!?
著者は現在のアクセンチュアで働いた経験のある大石哲之氏です。
大石氏が様々なバックグラウンドを持つ元コンサルタントたちをインタビューし、その中からビジネススキルとして役に立つものを30個抽出してまとめたのが今回の1冊です。
そして、この30個のスキルは、4つのカテゴリー(話す技術、思考術、デスクワーク術、プロフェッショナル・ビジネスマインド)に分類されています。
すべてのスキルを紹介することはできませんが、今回は各カテゴリーの中からいくつかをピックアップしながら解説していきたいと思います。
1: 話す技術
結論から話す
短い時間で必要なことを伝えるためには、まず結論から話します。
結論から話す方が重要なため、もし考えがまとまっていなかったり、結論が準備できていなかったりするようであれば、すぐに話し始める必要はありません。
コンサルタントの人であっても
少し考える時間をください
と言って、頭の中で話すことを整理してから相手に伝えることもあるようです。
もちろん対面での会話だけではなく、会議の運営やメールなどでも結論から話すことが求められます。
普段の会話でも結論を先に話すことを習慣づけることで、ダラダラと話してしまうことの改善につながるでしょう。
また、結論から話す方法として「PREP法」が紹介されています。
- P (Point) : 結論
- R (Reason) : 理由付け
- E (Example) : 具体例
- P (Point) : 結論を繰り返して終話
上記の手順に従って話す癖をつけることで、ビジネスの上で相手に自分の主張が伝わりやすくなります。
数字で語る
コンサルタントを職業としている人は、新入社員であってもクライアント先のベテランの人と互角に話をしなくてはいけないことが多々あります。
その時に武器となるのが「数字」に代表されるような、動かせない事実です。
売上や利益率、コストなど、数字で話をすることで相手を納得させることができたり、相手から信頼を得ることができたりするのです。
トークストレート
ビジネスの世界では言い訳をせず、率直に端的に話すことが求められます。
回答がネガティブなものであったとしても、です。
回答がネガティブなものである時ほど先に言い訳をしてしまいがちですが、本著ではまず「YES/NO」で答えた後に、その理由を話すようにすることを推奨しています。
例えば「○○の資料はもうできているか?」と上司に聞かれ、まだ着手していない場合、あなたならどのように答えますか?
今あの仕事とこの仕事が詰まっていて、もう少ししたら取り掛かれると思います
という答えは言い訳に過ぎません。
本著での模範解答は、
すみません、まだできていません
とまずYES/NOで現実を伝えた上で、その後に上司から続けて質問されればできていない理由やいつまでにできそうか、と詳細を答える順番を取る方が良いとされています。
上司が知りたいのはあくまで”できているのかできていないのか”という事実、そしていつまでにできるのかということだけであり、できていない理由は聞いていないのです。
相手の期待値を超える
本著では、ビジネスの基本は相手の期待を超え続けることであると述べられています。
相手の期待値を超えることで相手から認められ、評価につながるのです。
一方、仕事の指示は大半が曖昧なことも事実です。
そのため、相手の期待値を超えるためにもまずは相手のニーズを正しく把握することから始めましょう。
以下の4点を確認することで、自ずと相手が求めるレベルが見えてきます。
- 仕事の背景や目的
- 仕事の成果イメージの明確化
- クオリティ
- 優先順位、緊急度
なお、相手のニーズを把握できたところでそれに応えられないと判断した場合は仕事を引き受けない、もしくは相手の期待値を下げてもらうように交渉することも重要です。
いずれにせよ、相手と内容についてしっかり確認や合意を取ってから仕事を始めることは、期待値を超えられるか否かにとって欠かせないポイントとなります。
2:思考術
考え方を考える
誰にとっても時間は有限です。
そのため、ある課題を目の前にした時、どのように考えれば早く答えにたどり着けるのか、その方法を考えることから始める方が効率的です。
闇雲に手を出すのではなく、まずは頭で手順を考えてから作業に取り掛かるようにしましょう。
雲雨傘の論理
本著では思考を区別する例として、雲雨傘の論理というのが紹介されています。
黒っぽい雲が出てきたから雨が降り出しそうだ。傘を持った方が良い
上記の例では、
- 雲が出てきた→事実
- 雨が降りそう→解釈
- 傘を持っていく→アクション
と分けることができます。
本著では、「事実・解釈・アクション」を区別することが重要であると説かれています。
普段何気なく話している会話でも、実は混同していることも多いものです。
しかし、上記の区別をせずに混同してしまうと、論理が通らなくなってきてしまいます。
そして、相手にも正確に伝わらなくなってしまうのです。
仮説思考
大きな設計図を描いてから細部に落とし込むというやり方が紹介されています。
まずは予想できる範囲で仮説を立ててから仕事に取り組み始めましょう。
たとえ仮説が間違っていたとしても、仮説を立てながら検証をするのとそうでないのとでは、結論が出るまでの時間に差が出てしまいます。
自分の意見を持つ
日頃から何気なく読んでいるニュースに対して、あなたは何か意見を持っていますか?
本著では、何事に対しても自分の意見を持つことが大事であると説かれています。
ニュースを見て答えを求めるのではなく、自分ならどう考えるのだろうか、と考えることが重要なのです。
考える癖をつけることにより、ある意見を鵜呑みにすることを避けることもできます。
さらに、自分の意見を持って初めて、他の人と考え方が異なることに気づくことができます。
正解がない問いも多くある中で、まずは自分の意見を持つことが重要なのです。
そして、自分の意見を持っているからこそ、他の新たな視点が記憶にも残りやすいと本著では述べられています。
3:デスクワーク術
資料作成術
仕事の効率に関わってくるのがデスクワーク術です。
パワーポイントを使用した資料作成などは、一度はしたことがある人が多いのではないでしょうか。
本著では、資料作成の際は最終的な成果から逆算して作業プランを作ることを勧めています。
具体的には、タイトルを記したスライドだけを先に作ってしまい、資料の大枠を決定します。
そして、後から各々のスライドを肉付けするための資料を集めてくるのです。
資料を集めてからパワポを作成するよりも、どのような資料を作りたいのかイメージしてアウトラインを描いてから資料集めに取り掛かる方が必要な資料も探しやすく、資料作成の時間を短縮することができるのです。
そして、パワポ1枚に載せる情報は下記の4点に絞ります。
- タイトル
- 根拠の数字や事実
- 解釈や主張
- 出どころ
説明が多くて読みづらい1枚よりも、どのスライドも上記に沿って端的にまとめることで相手にも読みやすく、伝わりやすい資料となります。
なお「解釈や主張」が複数ある場合には、それぞれスライドを分けて資料を作成することが必要となります。
議事録の書き方
議事録には何を書いていますか?
会議で誰がどのような発言をしたのか、事細かくメモをしている人もいるかもしれません。
しかし、議事録に必要なのは以下の4点のみです。
- 決まったこと
- 決まらなかったこと
- 確認が必要なこと
- 次回に向けてやることリスト
こちらもパワーポイントと同様、毎回上記のフォーマットに沿って議事録を残していけば良いとわかってしまえば自分自身も議事録を作るスピードが上がります。
パワーポイントにせよ、議事録にせよ、毎回異なる形式を採用するよりも、常に同じ形を取っていた方が作る方も読む方も理解のスピードが格段と上がるのです。
プロフェッショナル・ビジネスマインド
バリューを出す
コンサルタントの人にとって、クライアントに貢献ができ、相手から価値のある仕事をしてもらえたと感じてもらえたなら、その仕事にはバリューがあると考えます。
重要なのは、バリューがあるか否かを決めるのは自分ではなく、相手であるということです。
バリューを出すためにも、自分が何をしたいのかではなく、相手が何をしてほしいのかという視点が重要です。
会議では意見を言う
コンサルタント業界では、会議で発言しない人の価値はゼロだと考えられています。
皆さんもバラエティ番組を見ていて、全く発言していない人がいたらどのように感じますか?
それでもギャラが支払われていると思うと、納得がいかないのではないでしょうか。
会議参加者も同じです。
会議に参加しているだけでお給料は発生しています。
お金が払われている以上、たとえどのような意見であっても、自分の意見を述べることが大切です。
シビアかもしれませんが「時間はお金」という感覚も仕事をする上では必要になってきます。
コミットメント力
コミットメントとは、約束は果たすということです。
コンサル業界でのコミットメントとは、クライアントの成功に対して成果を挙げなくてはいけないという意味に捉えられています。
他人の力を借りたのか、徹夜をしたのかというように、どのようなプロセスを踏んだかが重要なのではありません。
いかなる手段を講じてでも成果を挙げなくてはいけないというマインドを常に持っていることこそが、コンサルタントがプロフェッショナルと言われる所以なのでしょう。
Quick & Dirty
資料作成を依頼された時、あなたなら完璧に仕上げますか?
それとも、多少大雑把であっても素早く仕上げますか?
Quick & Dirtyというのは、汚くても良いから早く仕上げろ、ということを意味しています。
時間と精度は比例しないと考えられているため、効率を考えると短時間で60点の出来栄えのものを仕上げるので十分なのです。
チームワーク術
コンサル業界では、同じ役割を果たす人は2人はいらないと考えられています。
チームとは、個としてそれぞれの強みを持った集団の集まりであり、自分が他の人より秀でているのはどのようなスキルなのか、何をもってチームに貢献できるのかを考えることが大切です。
そして、他の人が得意なことを学ぼうとするのではなく、自分自身の強みに磨きをかけることに資源を投下しましょう。その方がチームにとって大きな成果につながるのです。
さいごに
以上「コンサル1年目が学ぶこと」の内容を解説してきました。
新入社員や若手社員の人はもちろんのこと、経験を積んだ方にとっても振り返りをすることができ、気づきの多い1冊となっていると思います。
ぜひ納得や共感できたスキルからでも、日々の仕事の場面に取り入れてみてはいかがでしょうか。