【父から子へ】日本1位マーケッターが語る「苦しかったときの話をしようか」




この本はUSJを経営の危機から救い、V字回復を実現した手腕を持つマーケティング界の実力者である森岡毅氏の著作です。

娘へのメッセージ

この本はUSJを経営の危機から救い、V字回復を実現した手腕を持つマーケティング界の実力者である森岡毅氏の著作です。

森岡氏には出版当時、就職活動で悩むご自身の娘さんがいらっしゃったそうですが、面と向かってアドバイスをすると聞き入れてもらえなかったことから、ご自身の考えを文書として綴っていたのだそうです。

それを本にしたのが今回の一冊となっています。

就活で悩んでいる人はもちろんのこと、既に社会人となり、仕事でのキャリアに迷われている方にもおすすめの一冊です。本著は6章で構成されています。

今回は各章のハイライトを順にピックアップしていこうと思います。

1章:やりたいことがわからなくて悩む君へ

今まさに就活をしている人、もしくは就活の経験がある人であれば、多くの人がぶち当たる壁ではないでしょうか。

やりたいことがわからない、どのような選択肢があるのかわからない、だから何を軸に就職活動をして、どのような道を目指すべきなのかがわからない、というのは就活で迷われている方のよくあるパターンだと思います。

本著で森岡氏は「自分の中の軸」を定めることの大切さを説いています。

そして、軸を定めるために自分をよく知り、自分の宝物となるような特徴を見出すことが重要であると述べているのです。

卒業して社会に出て長いキャリアを形成することは、つまるところ自分の宝物である特徴をきちんと認識し、それを社会の中で輝かせるための場所を探したり、より宝物が輝けるように磨き上げたりすることなのである、というのが森岡氏の考えです。

自分の宝物が強みになるキャリア選択をしましょう!

また、実際に社会に出てみた時、下記の2つに当てはまってしまった場合はあなたに決定的に向いていない仕事と言えます。

①自分の特徴が裏目にでる→自分の特徴が弱みとして際立ってしまい、強みとして発揮できていない状況

②情熱が湧いてこない→特徴が裏目に出ているから強みが発揮できずに成果が上がらず、達成感も高い評価も得られないから情熱が湧かない状況

これらの2つは連鎖していることが分かるでしょう。

このように、向いていない仕事についてしまわないためにも、自己分析をしっかりする必要があるのです。

分析を怠ると入社してから「こんなはずじゃなかった」という状況につながりかねません。

2章:学校で教えてくれない世界の秘密

この章で森岡氏はまず人はみんなそれぞれ違っていて不平等であることを認識することから始めるのだと言っています。

違うからこそ、自分が他の人よりユニークな点が見つかるのであり、それを認識できれば特別な価値を生み出すことができるようになるというのが森岡氏の考えです。

また、この章では資本主義についても触れられています。

資本主義とは”サラリーマンを働かせて、資本家が儲ける”仕組みになっているということです。

多くの人がサラリーマンとして生涯を終えることになるでしょう。

しかし、サラリーマンからの視点だけではなく、資本家の視点を持つことで世界がぐんと広がることもまた事実です。

ここで森岡氏が言っているのは、必ずしも資本家になる必要はないということ。

ただ、視点を広げてみて、その上でサラリーマン生活を送るのと、資本家の視点を持たずしてサラリーマン生活で終えるのとでは、その中身に差が出るのだと森岡氏は考えています。

資本家と聞くとそんなのなれっこない、と思う人もいるでしょう。

しかし、サラリーマンであっても企業の株式を保有することで、その企業の資本家になることができます。

資本家としてその企業の成長戦略等を考えたり意見を述べたりできるように企業の業績を研究することでも、十分資本家としての視点に自身の見方を広げることが可能なのです。

さらに、この章では年収に関する興味深い考察も紹介されています。

就活生の方であれば誰もが年収を一度は気にすることでしょう。

森岡氏によると、年収を決めるファクターは3つあるのだそうです。

①スキルの価値(マーケティングのスキルや営業スキル等)

給料が上がっていなければ、スキルのレア度を高めるための努力をしましょう。

仕事が早くこなせるようになる=仕事ができるようになるということではありません。

仕事が早くなってもスキルのレア度という点では高まっていないのです。

そうではなく、新たにできるようになったことに目を向けてみましょう。

スキルを磨くとは、新たな能力を身につけることでもあるのです。

②業界の構造

儲かっている業界では年収が高くなり、同業者では多少の差はあれど、それほど年収は変わりません。

そのため、業界に固執するのであれば、そこにいる限り年収の上限はほぼ決まっているということは認識しておく必要があるでしょう。

③成功度合いによる違い

同じ職種と業界で年収が異なるのであれば、自分が重要で、代替え不可能な能力を持っているか否かが重要な要因となってきます。

就活をする際は、上記のことを念頭に置きながら業界や職種を選んでみることも必要でしょう。

3章:自分の強みをどう知るか & 4章:自分をマーケティングせよ!

この本の中心ともなる章であり、実際にどのように自分の軸を定めていくのか、そのノウハウが語られています。

まずは自分のキャリアの目的を仮説として立ててみることから始めます。

その方法として、「どのような状態であれば自分は幸せなのか」という未来の理想状態から発想することを紹介しています。

次に「資源」を考えます。

資源とはその人個人の中に潜在する強みのことであり、強みとは自分自身の特徴と、それが発揮できる文脈がセットになったものと述べています。

就活の際にも「あなたの強みはなんですか?」と聞かれたり、その前に自問したりする人も多いでしょう。

しかし、すぐに強みを見つけられる人は多くはないと思います。

そこで、森岡氏は強みを見つけるためには文脈から探すのが近道であることを説いています。

では、具体的に文脈から探す方法を試してみましょう。

これまであなたが社会とのつながりの中で、心地よいと感じた文脈を列挙してみます。

「○○している時が楽しい」「○○するのが好き」ということを、最低でも50、できれば100個くらい挙げてみましょう。

ポストイットに書き出すとやりやすいです。書き出せたら次はそれらを下記の3つにカテゴライズします。

カテゴライズしたものを見てみると、自分の得意なことや不得意なことが明らかになってくることでしょう。

そこからあなた自身の強みやそれを活かせそうな職種、業界を見定めていくというのが森岡氏の推奨する自己分析方法です。

5章:苦しかったときの話をしようか

マーケティングの世界で名前を知らない人はいないほど有名な実力者である森岡氏ですが、彼のキャリアは成功ばかりではありませんでした。

森岡氏は、自分自身を信じられなくなった時こそがビジネスマンとして一番辛い時なのだと考えています。

自分が最後の味方であるはずなのに、仕事の不調によって自分の実力や自分がしてきたことが信じられなくなり、自分を最悪の人間だと感じてしまうのです。

本著では自分を信じられなくなり、苦しかった時のエピソードがいくつか挙げられています。

P&Gのマーケティング本部で働いていた際、周りの優秀なマーケターに囲まれて劣等感に苛まされたことがある時の経験もその一つです。

特にP&Gの商品の中には女性向けの商品も多く、ヒット商品を生み出すためのアイディア等がなかなか浮かばずに成績を上げられなかったこともあったそうです。

成果が出せないため、平日夜間や休日にも電話が鳴り続けたことがきっかけで着信音の恐怖症になり、30代半ばまで携帯電話を持つことができないほどのトラウマに陥っていたと言います。

また、P&G時代に誰もが上手くいかないと思っていたブランドを日本導入するというプロジェクトを任された時の話も紹介されています。

誰も上手くいくと思っていないものの、本社CEOが推しているからという理由だけで受けざるを得なかったプロジェクト。

ドラッグストアの前面に置いてもらい、なんとか売り出そうとするものの、もちろん結果は大損失に終わったそうです。

森岡氏はこの経験から、サラリーマンである以上は自分が上手くいくとは到底思えないことも引き受けざるを得ないという事実を認識したと言います。

そして、会社に使われる消耗品のような「人材」ではなく、会社をやめられると困るような「人財」になることを決意したそうです。

「人財」であれば上司や社長等とも対等に交渉できるようになり、会社に雇われなくても個人として仕事ができるようになるからです。

森岡氏は上記のような苦しい状況を乗り越えるためには「弱点から離れる」ことが大切だと説いています。

森岡氏は本著で「自分の弱点で成功することはありえない」と述べています。

弱点を克服して成果が出た、と感じることもあるかもしれません。

ただ、客観的に弱点を克服して出せた成果を鑑みると、それは大きな価値を生み出しているのでしょうか。

厳しく言ってしまえば、弱点を克服した程度に過ぎず、それよりも自分の強みをさらに伸ばした方がより大きな価値を生み出すことにつながります。

弱点を克服するのに労力を割いたところで生み出せる価値は少ないということを肝に銘じておく必要があるでしょう。

次のポイントは「変化し続ける」ということです。

変化を恐れて動けないと、あなたの前に広がる選択肢やチャンスを掴み取ることができません。

選択肢を持っていないと、挫折した時に解決策を自分で提示することができないのです。

つまり、挫折=その人の失敗、となってしまい、立ち直るチャンスを失ってしまいます。

変化を絶えず続け、可能性や選択肢を広げ続けることこそが、自分に自信がなくなったりピンチに直面したりした時の状況を打破する鍵なのです。

6章:自分の弱さとどう向き合うのか

最後の章では自分の弱さとの向き合うことについて書かれています。

弱さと向き合うのは簡単なことではありません。

避けて通れるなら避けたい道と感じる人も多いのではないでしょうか。

森岡氏は弱さとの向き合い方を「強みを補填できるなら向き合い、相反するなら諦める」と言っています。

例えば会社から何かを要求されている時、それが自分の強みや特徴を輝かせるものではない場合、受け入れてしまってはいけません。

どうしても受け入れなければ会社に残れないような場合は、新たな環境を考える方があなた自身の特徴を潰してしまわないためにも必要な選択肢となります。

逆に、強みをより強固なものにできるのであれば、弱さと向き合うことも重要な投資となるのです。

社会人になったときに挫折を味わうことのないよう、自分はドベスタートであるとイメージする方が良いことも述べられています。

相対的に見て自分ができていないところに目を向けるのではなく、昨日より何ができるようになったのか、と自分自身の垂直的な成長に着目しましょう。

特に高学歴の人やこれまでの人生が順風満帆だった人ほど、社会に出た時に自分と同じような実力の人に囲まれて戸惑ってしまうことが多いのです。

最後に

以上、「苦しかったときの話をしようか」の重要な点をピックアップしながらお伝えしてきました。

もちろん本著は当時の森岡氏の娘さんのように、就職活動をされている人に向けたメッセージとなっています。

しかし、自分自身を変えたい、キャリアに変革をもたらしたいと考えている人であれば誰もが今から読んでも遅くはありません。

変わりたい、と思った時こそがチャンスです。

10年に一度の傑作ビジネス書とさえ言われている本著なので、ぜひ一度手に取ってみられてはいかがでしょうか。

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