今や誰もが利用しない日はないインターネット。そのインターネットビジネスを牽引する世代と言えばホリエモンなどが頭に浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
2チャンネルとニコニコ動画
しかし、ひろゆき氏については知らない人も多いかもしれません。
でも、彼の提供するサービスなら知っているはず。その名も「2ちゃんねる」。
日本国内の匿名掲示板としては最大規模を誇る2ちゃんねるを立ち上げたのはひろゆき氏なのです。
今回は彼の新刊である「1%の努力」をご紹介しようと思います。
ひろゆき氏、本名西村博之氏は1976年神奈川県に生まれ、東京で育ちます。
中央大学に進学し、アメリカでの留学を経験した後、学生時代に1999年に「2ちゃんねる」を開設します。
また、2005年には「ニコニコ動画」を開始、2015年には英語圏最大の匿名掲示板である「4chan」を立ち上げて管理人となります。
ひろゆき氏が生まれた1976年は「就職氷河期世代」と呼ばれています。
それより前に就職した人たちはバブル世代であり、言葉を恐れずに言えば会社に守られながら生きてきた人が大半でしょう。
しかし、ひろゆき氏のように「就職氷河期世代」の人々は、バブル崩壊後の就職難の時代にどのようにして稼ぎ、生きていくのかを考えるのを余儀なくされたのです。
そのため、ひろゆき氏は人よりも論理的に考える能力には自信があると話しています。
そこで出版したのが今回の「1%の努力」です。ひろゆき氏の「考え方の基本となるスタンス」が埋め込まれており、現在の生活を手に入れるに至った思考についても知ることができるようになっています。
7つのエピソード
本著では7つのエピソードが紹介されています。
- 前提条件「団地の働かない大人たち」
- 優先順位「壺に何を入れるか」
- ニーズと価値「なくなったら困るもの」
- ポジション「どこにいるかが重要」
- 努力「最後にトクをする人」
- パターン化「明日やれることは、今日やるな」
- 余生「働かないアリであれ」
では、それぞれどのようなエピソードがあるのか見てみましょう。
<前提条件>
人の考え方や感覚は、育った環境に大きく依存することは自然と理解できると思います。
裕福な家庭で育った人は、貧しい国に暮らす人々の生活はなかなか想像しづらいでしょう。
日本国内だけで考えても、母親が専業主婦で父親がサラリーマン、週末になると家族みんなでお出かけという日常を送っていた人もいれば、共働き両親の元に育ち、小学生の頃から鍵っ子。週末も親が働いていたため友達と遊ぶことが多く、ご飯は作り置きやインスタント食品が日常、という人もいると思います。
人と違う点を挙げればキリがないことからも、みんなそれぞれに育った環境が違うため、人と考え方が異なってくるのは自然なことなのです。
しかし、人と話していると「なぜこの人はこんな考え方をするのだろう」と理解ができないことも出てくるでしょう。
例えばあなたは会社で働かなくても生活している人をどう思いますか?
「会社で働かずにどのように収入を得るのだろう」
「怠けているのではないか」
と考える人もいると思います。
しかし、自宅に引きこもって株やFX取引で大儲けしている人もいるかもしれないし、相続資産を運用しているだけで生活できている人もいるかもしれない。
はたまた生活保護を受けて生計を立てている人もいるかもしれないのです。
このように「会社で働かないと生きていけない」のような前提条件を頭から取っ払い、「この人とは生きてきた世界が違うのだ、前提条件が違うのだ」と認識することですっと相手の話が理解できることもあるのです。
そして、相手の話が理解できるようになると自分の視野も広がります。
そこに自分の新たな生き方を見つけるかもしれないし、自分は他の人よりも○○という点で生活が豊かだ、と感じることができて幸せに思えるかもしれません。
<優先順位>
幸せになるための優先順位をつけることが重要だとひろゆき氏は指摘しており、彼の場合は最優先事項として「睡眠」を挙げています。
例として壺の中に何を入れるのか?という話が出てきます。
壺の中には砂利や水など小さいものは後からいくらでも隙間から入れられますが、岩のような大きなものは後から入れることはできないのです。
自分にとって最も重要な「岩」は何なのか、ひろゆき氏の場合の「睡眠」に当たるものを、自分自身でも見つけることから始めてみましょう。
<ニーズと価値>
仕事をする上で考えるのは「この体験がなくなったら困る」と強く感じるものにエネルギーを注いだ方が良いということです。
ひろゆき氏は2ちゃんねるは「誰しもが一言だけ言いたい」という欲求に着目した結果にできたプラットフォームであると言います。
自宅でぼーっとしながらテレビを見ている時「あれ美味しそうだな」や「あの人の髪型変わったな」など、何かしらコメントをしたり思うことがあったりするのは自然なことです。
ひろゆき氏にとっても、匿名で何かを吐き出すというのはなくなると困る体験だったのです。
このように「それがないと自分が困る」と感じるものであれば、人生を捧げるくらいの価値があるものだとひろゆき氏は考えています。
<ポジション>
ひろゆき氏は、同じ職場であってもポジションの取り方次第で随分と変化を起こせると言います。
一例として、アルバイトでファミレスの店員をしている人を考えてみましょう。
汗水たらして一生懸命働くほどのインセンティブはないものの、バイト代は欲しい。
大して働いていなくてもクビにはされたくない時には、どうしたら良いのか。
ひろゆき氏が考える「1%の努力」であれば、他の店員を巻き込んで「この人をクビにしたら私もやめて別のところで働きます」と宣言してしまうことが戦略的なポジションの取り方なのだと言います。
アルバイト先の店長にしてみれば複数名が一気にやめてしまっては困るし、かと言って店員たちも全く働いていないわけではないからクビにするほどではないのです。
一人だけ怠けていては一人をクビにすることくらいはできるでしょうが、数を味方につけることでクビにされにくくなるのです。
働き方は変わっていなくても、自分の立ち位置を「一人だけ怠けている」から「怠けている複数名の中の一人」というポジションに移し替えるだけで、その場で生きていける可能性を伸ばしているのです。
<努力>
ひろゆき氏の発言だけを聞くと、一見驚く人もいると思います。
日本では努力が美とされる傾向にあり、努力をすれば成果がつかめると感じている人も多くいるでしょう。
しかし、ひろゆき氏はこの考え方に異議を唱えます。
高学歴を掴むために努力をしようとしても、生まれた家庭環境により受けられる教育に差が出ることはデータからも実証されています。
東大生のうち、年収450万円以下の家庭に育った人は1割にも満たないのだそうです。
この結果からも、ひろゆき氏は根性論や努力神話を否定し、最小限の努力で幸せを掴む方法を考えることに思考をシフトしています。
エジソンの有名な言葉に「99%の努力と1%のひらめき」というものがありますが、ひろゆき氏はこの言葉の解釈が誤って広まってしまっていると言います。
本来は「1%のひらめきがなければ99%の努力は無駄になる」という意味ですが、努力すれば成功が手に入れられるという意味で理解してしまっている人も多いのではないでしょうか。
エジソンのように発明の世界では「1%のひらめき」があるからこそ成果につながるのです。逆に、1%のひらめきがなければ、いくら努力をしたところで水の泡となってしまいます。
また、ひろゆき氏は大企業を例に挙げ、トップ層が優秀であればその下で働く社員に抜きん出ている人がいなくても会社として業績を残していけることを説いています。
「社員の努力が足りないから経営悪化につながった」のような話は本質を見誤っているのであり、経営者の舵取りが上手くなかったことを社員の努力という点に責任を押し付けているだけなのだとひろゆき氏は指摘します。
本著では繰り返し「努力=成功」ではないということが述べられており、努力すればなんとかなる、という考え方を捨てるべきであるというのがひろゆき氏のスタンスです。
<パターン化>
ひろゆき氏が大事だと考えるものの一つに「チャンスを掴むこと」があります。
日本では一生懸命働くことが美とされる傾向にありますが、そのような努力よりも、チャンスを掴むためにアンテナを張っておくことの方が重要だとひろゆき氏は考えているのです。
チャンスを掴むためにも、ひろゆき氏は「片手を空けておく」ことが大事だと言います。
常にスケジュールがぎっしり埋まっていたり、努力すれば何とか乗り越えられると考えていたりする人は両手がふさがっている状態であり、目の前のことで精一杯になってしまいます。
そうすると、チャンスが到来した時にもチャンスと気づかずに見逃してしまうことが大いに有り得るのです。
やらなくても良いことまで手を伸ばすのではなく、あえてやらないという選択肢を取り、時間的にも気持ち的にも余裕を持っておくことが、チャンスが来た時にそれを物とすることができるというのがひろゆき氏の考えです。
一番身近な例として飲み会を挙げてみましょう。
突然当日の飲み会へのお誘いがあった時、あなたならどうしますか?
予定がびっしり埋まっていると断ることになるのではないでしょうか。
しかし、今日やらなくても良いことは後回しにするという少しの心がけ(いわゆる1%の努力)をしている人は時間にも気持ちにもゆとりがあり、飲み会に参加できるかもしれません。
その飲み会には新たなビジネスチャンスにつながるキーパーソンが来ているかもしれないし、未来のパートナーとなる人が来ている可能性もあります。
そのようなチャンスをつかめるか逃すかは、片手を空けておいた人かそうでないかに依るのです。
<余生>
ひろゆき氏は、特に日本人は聞き分けが良いことに警鐘を鳴らしています。
代表的な例が年金です。
年金の原資となる資金は少子高齢化によりどんどんか細くなっているのは明白であり、現在積み立てている年金よりも受け取れる年金が少なくなることは見えているにも関わらず、多くの人が文句を言わずに年金を積み立てているでしょう。
困るのは自分であるにもかかわらず、従順であるのが日本国民の特徴なのだと思います。
ただ、ひろゆき氏の生き方でもある自分本位な「働かないアリ」になるためには、この聞き分けの良さは裏目に出てしまいます。
自分が苦しくならないためにも、自分本位で考え、実行に移すことこそが、少しの努力で上手く生きていけたひろゆき氏の成功の秘訣なのだと言います。
また、働かないアリになるためにも情報のインプットをしておくことは重要だとひろゆき氏は考えています。
インターネットが普及した現代では「調べる」ことのコストはほとんどかかりません。
スマホ一つあればいつでもどこでも気になったことを調べられる世の中なのです。
なので、調べる労力は惜しまないことが大切だとひろゆき氏は話します。
何事も戦略を立てるためにはまず調べた上で、得になりそうなことや働かないアリになれそうなことを考えるのです。
例えば、ふるさと納税やNISAやiDeCoなど、政府が用意している税金対策や年金対策を利用している人はどれくらいいるでしょうか?
これらを利用しなければただただ住民税を払うだけ、配当金等の利益から税金が引かれるだけ、のところを少しのリサーチと実行に移すことで税金を払いながら食料を手に入れられたり、引かれるはずの税金が非課税になったりするのです。
面倒がってしまう人もいると思いますが、働かないアリになるためには調べる労力は惜しまないことで、結果的に自分が得や楽をすることができるのだとひろゆき氏は言います。
最後に
以上、「1%の努力」の中で出てきた、ひろゆき氏の「考え方の基本」となる点をご紹介してきました。
努力すれば夢が叶う、という考え方に一石を投じる本ではありますが、固定観念を捨て、より良く生きるための方法を取り入れるための気付きを得られる本でもあると思います。
なるほど!と思ったところだけでもぜひ実践してみてはいかがでしょうか。