前回では、口コミを起こすために必要なブランディング、それを構築するために「物語(ストーリー)」という要素がとても大事ですよということについてお伝えしました。物語が構築されると特に人は、他人に話したくなります。世の中の口コミされるお店や商品の多くは、地代に関係なく、この法則が当てはまります。
女性の社会活動を応援するために、ココシャネルが考案した女性用のパンツスーツ、タクシードライバーをパイロット並みの地位に押し上げようとしているMKタクシー、東京青山にある、アマンリゾートを日本にというコンセプトで作られているレストラン「カシータ」の事例をお伝えしました。どれも、物語があるから、人は人に伝えたくなるのです。
ですので、まずはお店の物語を考えてほしいのです。しかしながら多くの経営者が言うのは、「当店には、そんな物語はありません」という言葉。
私は1000店以上の店舗経営に携わった経験から申し上げます。1000店あれば1000店分の物語が必ずあります。経営者自身が認識していない、もしくは忘れているだけの話です。今号では、自店に隠された物語(ストーリー)を明確にするためのステップについてお話させていただきたいと思います。
開業当初の想い
私がコンサルタントをしていて一番びっくりすることがあります。コンサルティングサービスを提供する際、一番初めにまず経営者(オーナー)とじっくりとお話します。その中で、まず一番、最初にする質問が、「なぜ、このお店を経営しているのですか?」という質問です。
そのたび愕然とするのは、その答えが「いや、なんとなく」「たまたまですね~」「そんなこと考えもしなかったです」と言われる経営者が多いこと。「えーなんとなく経営しているのですか?」と。そこで「開業当初、どんな想いでスタートしたのですか?」という質問に変えてみます。
すると「そうだったな~、そういえば・・・」と思い出されるのです。「このサービスを提供して、お客さんに喜んでもらいたい」とか、「スタッフの教育とともに、他店舗展開をしていきたいな」とか、「一人でも多くの笑顔を、お店いっぱいに増やしたい」とか、そういった希望が必ずあると思います。無ければなかなか開業するまで思い切った行動は取ることは出来なかったと思うのです。
大体、店舗を開業して、3年~5年たった頃に、この「なんとなく」惰性経営が始まるようです。希望に燃えて開業したものの、中だるみの時期を過ぎて、成長もいったんストップ。当初の志をだんだんと忘れて、日々の繰り替えしに陥る。
しかしながら、無理もありません。経営者は、とくに叱咤激励される機会もなく、自分自身でモチベーションを管理しなければなりません。少しずつテンションは上がっていき、誰かにこういった質問を受けない限りは、改まって考えることをしなくなってしまいます。
しかしながら、この「開業当初の想いは?」という質問から、お店の存在理由につながり、理念になり、それがブランドとなって、口コミが発生するというメカニズムを知ることができれば、誰しもがもう一度真剣に、開業当初を思い出したくなるでしょう。
魔法の質問
物語(ストーリー)を明確にするために、大事な事は、まず経営者である自分自身に質問することです。私が質問するパターンはいつも同じです。上記に加えて、名づけて「魔法の6質問」(自店を分析するための質問)をご紹介しておきます。
店舗経営の最大の肝、あなたのお店を黒字にする最大のポイントは魔法の6質問!
- お店の現状について教えてください。
- 目標について教えてください。
- 目標を作った背景を教えてください。
- 目標達成のための施策について教えてください。
- 施策についての満足度を教えてください。
- 今までの質問と答えを再度確認させてください。
- 店の現状について教えてください。
売上、経費、営業利益、損益分岐点、新規客数、リピート客数、客単価、問題視している点などです。 - 目標について教えてください。
どのような店舗を作りたいか、どうしてこの店舗を作ろうと思ったのか、売上目標、対前年比、期限など - 目標を作った背景を教えてください。
何故、あなたは、この目標を立てたのか?もう一度振り返って考えてみてください。何の為にお店を経営しているのか?何の為に、その目標を達成する必要があるのか?もちろん赤字店舗を黒字化することはひとつの大事な理由です。赤字のままでは、お店は存続できません、顧客にサービスを提供する器そのものがなくなってしまいます。 - 目標達成のための施策について教えてください。
目標達成の為に、過去、現在に行った様々な施策について教えてください。これから行おうとしている施策をあわせてあげてみてください。 - 施策についての満足度を教えてください。
過去、行ってきた施策について、オーナーであるあなたの満足度を教えてください。 - 今までの質問と答えを再度確認させてください。
以上が、質問内容です。まず自店を客観的に見つめなおしてみましょう。
今回のポイント
- 開業当初の想いを思い出してみよう
- 自身に質問をすることで、自店を分析してみよう
- 効果的な質問は、「魔法の6質問」