事業承継のご相談がかなり増えております。戦争が終わり焼け野原から、高度経済成長を経てこの間、様々な事業が立ち上がりました。近年、規模の大きさ問わず、それらの大切な日本の事業体を後生に残すためにも、経営者はかならず財務の知識を身に付けなければなりません。
「資本提携」により事業承継問題をクリアする
後継者不在という課題は、資本提携という他社との強固な協力関係を結ぶことによって解決できる場合があります。
資本提携とは提携相手の会社から資本(株式)を受け入れたり、提携相手に資本を投入したり、お互いに資本を持ち合ったりすることです。
このように資本の繋がりを持つことで、会社間の関係性を業務提携のような単なる契約関係以上の強固な関係性を作ることになります。
人間関係でいえば、結婚とか養子みたいなもので、親族関係になるのに等しいといえます。方法は以下の6通りです。
- 提携相手の会社から資本を受け入れる
- 提携相手の会社に資本を投入する
- お互いの資本を持ち合う
- 提携相手の会社と株式交換をする
- 共同で持ち株会社を作る
- 提携相手と合併する
資本提携は、資金調達だけでなく、経営者というリソースを確保していくことも一つの目的であります。
気をつけるべき株式シェア(比率)のポイント
資本提携を行う場合、以下の事は非常に重要ですのでぜひ、覚えておきましょう。
持株のシェアによって株主の権限は以下のように異なります。
- 100%:完全子会社 66.7%以上※1:完全支配=特別決議(取締役解任、定款変更など)を単独で議決可能
- 50.1%以上※2:子会社、経営支配=普通決議事項(取締役選任、決算承認など)を単独で議決可能
- 33.4%以上※3:経営権(特別決議に拒否権を持つ)
- 25%以上:受取配当金の益金不参入
- 20%以上:関連会社(連結対象)
- 15%以上:持分法適用会社(連結対象のケースあり※4)
- 10%以上:帳簿閲覧権
- 3%以上:株主総会開催請求、取締役解任請求
- ※1 正確には2/3以上
- ※2 正確には1/2超
- ※3 正確には1/3以上
- ※4 取締役の就任など重要な経営関与がある場合
株式シェアは経営主体をはっきりさせることでもあります。もっとも、紆余曲折の中小企業の場合では、経営者の株式シェアが時を追うごとに低くなってしまうこともあります。
もちろん、低いからダメということではありませんが、まず経営者として特に頭に入れておくべき数字は以下です。
株式シェアが66.7%(正確には2/3超)は、株主総会の特別決議を決定できるという株式シェアです。
特別決議は、株主の持ち分に変動をもたらす事柄で、第三者割当増資、合併、株式交換、会社分割、事業譲渡、解散など、会社の極めて重要な議案の決議をするのは、株主総会で議決権の2/3超の賛成が必要になります。
66.7%を保有するということは、それを自由に決議できるということになります。
次に51%(正確には1/2超)ですが、 これは株主総会の普通決議を決定できる、という株式シェアです。
普通決議とは、会社運営上の重要な事柄、例えば、取締役・監査役の選任・解任、決算内容の承認などの決議です。
次は33.4%。これは、先の66.7%とは裏腹の特別決議を阻止できる株式シェアです。 会社の合併や解散の議案が上がっても、反対すればそれを阻止することができます。
ただ、ここで間違えてはいけないことは、株式シェアは会社の所有の問題であって、経営の問題ではないということです。
経営は会社を所有するために行うわけではなく、業績を上げて、経営者も株主も従業員も取引先も、みんなが豊かになれることが一番大事なことです。
ですから、あまり株式シェアにこだわるよりも、会社の業績を上げることを重視して考えることが経営者にとっては必要です。
株式を後生大事に持ち続けることと、会社の成長や安定を目指すことのどちらが経営者として重要なことなのか?
についてもう一度考えてみる必要もあります。 会社を継続させたり成長させたり安定させるために時と場合によっては大企業や投資家に資本(株式)を持ってもらうことも一つの選択肢です。
実際、株式上場するということは、多くの株主に株式を持ってもらうことですし、大きく成長させた会社は上手に外部から資本を受け入れて、資金力や財務力を強化しています。
そうやって株式(資本)を外部から受け入れて、会社の継続とさらなる成長に向かってアクセルを全開に踏むことを資本政策といいます。
本日も最後までお読み頂きありがとうございました。