預金封鎖とは戦後の日本やアルゼンチン、ブラジルなどで実際に行われた政策です。国が国民の預貯金を一時的に凍結し、自由にお金を引き出せなくすることをいいます。そして、国が預金から税金を強制的に直接徴収し、国の莫大な赤字の補てんに充てるという仕組みです。
預金封鎖なんてありえない
預金封鎖のような強権的な政策は今の現代ではありえない、と考える人も多くいます。ただ、日本の債務があまりにも膨れ上がってしまっており、その赤字を解消できるような効果的な方法がないのが現状です。
そのようなことから、「赤字でデフォルト(倒産)しそうな日本を救う最後の手段として、預金封鎖が行われる可能性もゼロではない」と言われ始めてきているのです。もちろん、現時点において日本での預金封鎖の可能性は高いとは言えません。
ただでも、今年はいよいよお危ないと言われていたのに、消費税増税、コロナショック、原油価格の暴落、株安、円高、つぎつぎにいろんなことが押し寄せています。
預金封鎖、万が一この政策が行われるとダメージははかり知れませんので、預金封鎖の知識や対策方法を知っておくことは大切です。
この預金封鎖は戦後の日本だけではなく、近年も以下の国で実際に行われました。
- 1946年 日本
- 1990年 ブラジル
- 1998年 ロシア
- 2001年 アルゼンチン
- 2002年 ウルグアイ
- 2013年 キプロス
このことを見ても、預金封鎖は頻繁に行われることはないものの、政府が必要だと判断した時には実行されてきた政策であるということがわかります。
預金封鎖の仕組みは簡単です。
まず、国が国民の資産を凍結し、移動できないようにします。そのようにして国民の預金額を国が把握したあと、「預金税」「資産税」などという名目で税金をかけ、銀行口座の預金から直接税金を徴収する仕組みです。
戦後の日本の預金封鎖では「全財産に課税する」とされたため、預貯金だけではなく株式や国債、不動産、ゴールドなどすべてのものに課税されました。
これらの資産税は、銀行に預けている預金から直接徴収されます。そのため、税金を支払いたくなくても抵抗することはできません。税率何十パーセントにも及ぶ税金を、支払わざるを得ない状況になります。
戦後の日本の預金封鎖の後に行われた「資産税の課税」は税率は25%~90%という高いものであり、資産額に応じて税率が高く設定されていました。資産を持っていればいるほど、高い税率がかけられ、多くの資産を奪われたことになります。
そして預金封鎖が行われる前日には政府が「新円切り替え」を発表し、その次の日に預金封鎖が発動されました。みな近々使えなくなる旧円を銀行に預けに来ていたため、預金封鎖前日には、銀行にはいつもより多くのお金が集まっていたであろうことが想像できます。
そして、その翌日に預金封鎖が行われたのです。市中にある現金をまず銀行に集めてから預金封鎖を行ったという、政府の用意周到さが見てとれます。
国家あっての国民生活なので、国家を維持するためにやむを得ず預金封鎖が行われたと考えられますが、このことにより、多くの国民が辛い生活を送ることとなりました。
このように、戦後は「預金封鎖」と「新円切り替え」「資産税」の3つが同時に行われ、国民の資産の多くが国に徴収されることとなったのです。
これらの影響がどれくらいの期間続くかはわかりませんが、いままでの日本とはまったく違う環境になってしまうことは覚悟しておかなければなりません。
- 日本国債の暴落と金利の高騰
- 円の信用度低下・日本円の暴落
- 国内が混乱・生活必需品や食料の高騰(ハイパーインフレも)
- 景気が悪化し倒産件数が増える
- 失業率も増加
- 職がない人が増えて貧困層が拡大
などなど、とんでもないことがおこります。
ところであなたは、映画「相棒 XDAY」をご存知でしょうか?
この回の主人公は、警視庁刑事部捜査一課刑事の伊丹憲一と、新キャラクターでサイバー犯罪対策課専門捜査官の岩月彬です。この二人が相棒となり、データ流出事件を発端に明らかになっていく政財界を揺るがす巨大な陰謀に立ち向かっていく話です。
あらすじは、特定の銀行である日プログラムミスを装って、客の預金がおろせなくなった、という実験をして、客の反応がどの程度パニックになるかをテストするという政府の悪巧みを解明していくという話です。
その悪巧み、陰謀というのが、実はかって大蔵省がシミュレーシヨンしたことがあるということをコンサルタントの大前研一氏が以前、書いてしました。
この映画はあきらかに、このシミュレーシヨンを知っているものが、このストーリーの概略を作ったとしか思えません。
大前研一氏が自身のブログでこの旧大蔵省の話が実例であることを暴露しているのです。そしてその大前研一氏が「キプロスの「銀行預金課税」問題は他人事ではない」とコメントしています。
ちなみに、以下が旧大蔵省の預金封鎖シュミレーションです。
旧大蔵省の預金封鎖シミュレーシヨン
日本で金融資産が底をついた時、どんな混乱が起きるか
ところで、この「銀行預金への課徴金」というのは、日本にとっても他人事ではない。日本が財政危機に陥れば、新紙幣の発行と同時に銀行預金に事実上の課税を行うことになるだろう。
たとえば、旧紙幣で100万円を銀行に預けていた人が、新紙幣では80万円にされる。こうやって国民の資産から2割を巻き上げることで財政赤字を賄うのである。
実は、1990年代の住専危機の後に当時の大蔵省がこれを試みようとしていた。この時は、国会議員やATMメーカーなどから情報が先に漏れてしまったので、計画は頓挫してしまった。
ATMの設計技術者がおかしな仕様に気づき友人に口外してしまったり、官僚から相談を受けた議員などが地元で話をして噂が広まった。広島のある金庫メーカーに注文が殺到したのも同じ頃だから、タンス預金を意図していた人が意外な広がりを見せていたのだろう。
今後、国債市場が動揺するようなことがあれば、財務省は必ずこの「禁じ手」を使ってくるだろう。公的債務が国内総生産(GDP)の2倍以上になった日本では、どんなに緊縮財政をとっても、見せかけの景気刺激策をとっても、消費税を2倍にしても、その債務を返済することは難しい。
いまは国民の金融資産を国債に転換する装置(銀行や郵貯など)をフル稼働させているが、間もなくその財源が尽きる。その時に、日本ではどのような混乱が起きるのか。アイスランドやキプロスの問題から学ぶことは多い。
現在の日本は債務超過で、借金が増え続けており、国の借金の深刻度を示す「政府の債務残高の対GDP比」は先進国の中では最悪で、230%を超えています。戦後では、日本の債務残高の対GDP比が200%を超えたあたりで預金封鎖が行われていました。
しかしながら、このピンチをチャンスに変える方法まであるのです。
預金封鎖対策
海外に金融機関の口座さえ持っておけば、送金ひとつで資産を海外に送れるようになり、いざというときの選択肢が広がります。
海外の口座にすべての資産を海外に移すことは現実的ではありませんが、まずは口座を開設し、たとえ少しであっても資産を海外にうつしておくと良いでしょう。
また、海外に資産を持っておけば、預金封鎖時であっても自由に動かせるお金があるため、暴落した土地や株式を購入することができます。
海外の金融機関に口座を持ち、そこに資産を保有しておけば、「資産を守る」ということに加え、富豪になれるチャンスもめぐってくるかもしれません。
すでに外貨預金や海外の投資商品を購入している人も、日本の金融機関で保有していた場合は預金封鎖で凍結され、リスク分散にならない可能性があります。
海外の金融機関で外貨や投資商品を保有することも検討すると良いでしょう。
預金封鎖が行われると、まず真っ先に円が暴落すると考えられますので、ドルなどの外貨を持っておくことが預金封鎖対策になります。
封鎖で金持ちに?!
さらには、戦後の日本で行われた預金封鎖の際には、資金を外国に移していた森ビルの創業者が暴落した土地を大量に購入し、財産を築いたという話があります。
また、1998年にロシアの国債のデフォルトをきっかけに行われた預金封鎖では、ニューリッチと呼ばれる富裕層が生まれました。
ロシアの預金封鎖ではロシアの銀行に預けていた預金はすべて国に奪われてしまい、一切手元に戻ってくることはありませんでした。
また、預金だけでは危険だということで貸金庫に金やダイヤなどの宝石、外国株式などを預けていた人達も、それらをすべて没収されてしまったのです。
しかし、このような中でも、外国の銀行にドルを保有していた人達は資産を凍結されず、守ることができました。
彼らはそのお金を使って、暴落してタダ同然となったロシアの土地を買いあさったことで、ニューリッチと呼ばれる富豪になったのです。
彼らが預金封鎖を予期していたかどうかはわかりませんが、リスクに備えるために外国に保有していた資産のおかげで、資産を守れただけではなく、資産を増やすこともできたということになります。
ただ、日本の金融機関でドルなどの外貨を保有していても凍結される恐れがあります。また、万が一銀行が倒産した場合、外貨はペイオフの対象外となりますので、円預金のような1,000万円までの保証がないというデメリットもあります。
できれば海外の金融機関の口座にドルやユーロなどの外貨をもっておくと安心です。
金や不動産などの「実物資産」を保有しておくことも預金封鎖対策になります。預金封鎖で銀行口座が凍結される場合に備え、資産は預金や株式などの金融資産だけではなく、他の種類のものと分散して保有することがおすすめです。
特に金は換金性が高いため、「金の実物」を自宅で保有しておくことは、万が一のときに有効です。ただ、場合によってはマイナンバー制度により資産の保有を特定され、これらの実物資産へも課税される可能性があります。
「預金封鎖は起こらない可能性が高いが、絶対に起こらないとも言い切れない」
ということが、現状を正しく表している言葉であるといえるでしょう。
預金封鎖に関する知識を知れば知るほど「もしものときに起こるダメージの大きさ」が理解できることと思います。自分の資産を守るためにも、無理せずにできる範囲で何らかの対策を行っておくことをおすすめします。
すくなくとも、この数週間は、現金をある程度持ちましょう。お釣りに困るといけないので、千円札や小銭もある程度持っておきましょう。