ドリームチームの作り方・基本
あなたのお店で働く、スタッフのチームづくりについて、お話していきたいと思います。
私が、経営コンサルタントとして、最も大事にしている業務が2つあります。
一つめは、経営者の意識を変えるための手法。
どれだけ、様々なノウハウを駆使して、集客を考えたり、
計画を立てたとしても、経営者の意識が変わらない限り、お店は変わりません。
二つめは、そのクライアントの店舗で働く、スタッフと経営者の関係を、
良好に保つために、そのパイプ役としての業務です。
雇用者と被雇用者の関係。
これは、実は非常に難しい人間関係なのです。
経営者とスタッフの関係がうまくいっている。
理想ですが、これが、じつはなかなか難しいのです。
夫婦の関係にも似ているかもしれません。
外から、仲良く見える夫婦もふたを開けてみると、どうかわかりません・・・
とても残念ですが、現実をしっかりと認識する必要があります。
実際、小規模店舗の経営では、
オーナーが夫婦で経営されているケースがほとんどです。
このオーナー夫婦の関係性が、
如実に店舗スタッフとの関係にも反映されてきます。
実際のパートナーである経営者夫婦が、うまくいっていなければ、
お店自体が、うまくいくはずがありません。
これは、私も耳が痛い話ですが、
実際に何度も、店舗スタッフから、経営者夫婦の意見の違いに、
どのように働いていいか分からなくなるという声を聞いてきました。
あなたのお店のドリームチームを作る第一歩は、
経営者、役員、幹部の意思疎通がしっかりやっていくということです。
ついつい、話がこじれやすい、1対1の関係ではなく、
私のような第三者を挟み、ミーティングを行うことにより、
客観的な意見をもとに、
意思伝達をスムーズに、感情共有を素直に行っていくのです。
さて、それでは、大事なお店のドリームチームについて、
その完成系の条件は、どのようなものでしょうか?
経営者の声をお伺いした結果、下記のような組織が、
お店のドリームチームと言えるのではないでしょうか?
- 同一の危機感を感じている組織
- 共通の価値観を持っている組織
- 自信と他のスタッフ全員への信頼がある組織
- 感謝の気持ちを全員が持っている組織
- 高い目標を自主的に追いかけている組織
これが店舗経営者であるあなた、
そしてスタッフが目標とすべきチームの理想像です。
このようなスタッフが、あなたのお店で働いてくれていれば、
百人力だと思いませんか?
どれだけ素晴らしい集客方法を思いついても、店舗で働くスタッフが、
モチベーションダウンしていては、たいした結果は生まれないものです。
このようなすばらしいドリームチームを作り上げるためには、
以下のステップを踏んでいく必要が、あります。
- 採用
- 動機
- 達成イメージ
- 管理
この4つのステップを確実に踏んでいけば、
必ず、あなたのお店のドリームチームができあがります。
素晴らしい組織に相応しいスタッフの採用について
ドリームチームの作り方、1段階目、まず優秀なスタッフの採用方法から入ります。
スポーツの世界もそうですが、毎年、どのチームも優秀な選手の獲得に多大な時間と労力と、お金をかけます。お店の経営でも同じことです。とにかく優秀なスタッフが欲しいと、どの経営者も考えています。
問題は、その採用チラシに載せる情報にあります。
ただ単に、時給などの条件を記載するだけでは、あなたのお店で働きたいという衝動は、なかなか起こりません。よっぽど給与条件が良ければ別ですが、
多くの場合、給与は、業界の中で大きく変わることはありませんね。給与・条件などでの他店との差別化は難しい。ではあなたが、優秀な人材を採用するために、どんな情報を採用のチラシに掲載すればいいのでしょうか?
- あなたのお店の理念
- あなたが自店のスタッフに約束すること
- あなたが自店のスタッフに期待すること
- 以上の条件にそぐわない人は、応募しないでほしいということ
- スタッフ全員笑顔の集合写真と、実際の現場で働いているスタッフの写真
以上です。この5点を載せることによって、採用のミスマッチはだいぶ減少することでしょう。
応募者があなたのお店を選ぶのではなく、お店側が、応募者を選ぶというスタンスが大事な部分です。
ここまでしっかり明記してくれていると、働き先を探している人間にとっても、安心感と信頼感を伝えることができます。
次に面接時の対応、
小規模店舗でドリームチームを作る為の採用で一番大切なことは2点、
素材を見抜くこと。
妥協しないこと。
この二つに尽きます。それでは、実際の面接の際に、その人間のポテンシャルを見抜くための、チェックするべき項目を挙げていきたいと思います。
採用の際に、最も重要な質問は、以下の5つになります。この5つの質問に対して、どんな返答でも、ちゃんと答えることができる人物は、かなり有望です。実際、働くことになってからの、その人物の性格を、見抜くための質問です。
(1)「お店の理念を確認してもらって、どのようなことを感じましたか」
この質問は、その人物が、お店の理念を読んで共感してもらっているか?どうかを確認する質問です。もちろん面接に来て、お店の理念を悪くは言う人はいないと思いますが、あまり興味を示さない場合、もしくは、良く読んでいない人は、要注意です。
(2)「あなたは、この面接の為に、どんな準備をしてきましたか?」
この質問は、その人間の段取り力を判断するために、非常に重要な質問です。お店で働く場合、一番求められるスキルが、この段取り力です。あらかじめお店に下見をしに来た、理念を覚えてきた、時間の10分前に来る為に、地図を念入りに確認してきた、などの、なんらかの準備をその場で答えることのできる人はOK、何も答えることができず、「別に・・・」などと答える人は、お店で働きだしてからも、準備も主張もできないパターンが多いのです。
(3)「あなたの両親は、どんなお仕事をされていますか?」
この質問は、その人物が幼い頃からどのような環境で育ってきたかを確認する質問です。
経営者がいいとか、サラリーマンがいいとか、とくにどの職業がいいという訳ではありません。経営者の場合は、リーダーになる素質があり、サラリーマンの子供の場合は、名サポーターになる可能性があります。これも一概に言えませんが、あくまで判断基準のひとつにしてください。
(4)「あなたが、このお店で働くと、このお店にどんな、いいことがありますか?」
この質問をする目的は、その人間の利用価値を確認するためではありません。その人物が、いかに客観的に、自分を見つめることができ、どのようにすれば相手の役に立てるか?そういう思考をすることができるかどうか?を確認する質問です。
ほとんどの場合、頑張ります!とか真面目にやります!とか、自分の主観で答えてしまうものですが、ちゃんと、客観的に捉え、私がこのお店で働くことになれば、お客様の笑顔が増えます!同僚スタッフを元気にします!職場を明るくします!など、答えることのできる人物であれば、有望です。
(5)「将来の夢は何ですか?」
この質問が、最も重要な質問かもしれません。先述しましたが、スタッフは、お店の為に、
そして自分の為に、この二つのベクトルの方向が重なったときに、モチベーションがあがり、一所懸命働いてくれます。
その人物の夢を叶えるために、自分のお店で働くことが、かならずプラスになる。そう、本人も、経営者であるあなた自身も確信する必要があります。夢が万が一無い場合でも、今探している最中という答えであれば、問題ありません。
ただし、全く夢とか目標には興味が無いという人物は、ある意味、割り切って働いて貰えるので、一スタッフとしては使いやすい点もあるのですが、あとあと、チームの統率をはかりにくくなる可能性がありますので、やはり採用は見送る方が得策かもしれません。
スタッフが頑張れない理由
次に採用後のお話でです。
「スタッフが言うことを聞かない」
「スタッフが思い通りに動いてくれない」
「スタッフは愚痴だらけ」
「スタッフがすぐやめてしまう」
以上のような愚痴を、あなたも口にしたことがあるかもしれません。
しかしながら愚痴ばっかりで、何故そんな状態にスタッフが陥ってしまうのか、真剣に考えてみた事はありますか?
スタッフは、何故頑張る事ができないのでしょうか?一度、スタッフの気持ちにもう一度戻って、考えてみてください。
- 何のためにやるのかわからないと頑張れない。
- どこまでやればいいのかわからないと頑張れない。
- 何をやればいいのかわからないと頑張れない。
- いつまでにやればいいのかわからないと頑張れない。
- 納期間近にならないと頑張れない。
- できる!というイメージが持てないと頑張れない。
- 誉められないと頑張れない。
- 時には叱られないと継続して頑張れない。
- いつまでも同じ仕事のレベルでは頑張れない。
- 人から押しつけられたことは頑張れない。
- 正しい評価をしてもらえないと頑張れない。
- 給与が低いと頑張れない。など
逆にいうと、これらの「頑張れない理由」を全て解決すれば、スタッフは、頑張れるということになります。
頑張れない理由 「何のためにやるのかわからないと頑張れない。」対策法
これは、読んで字の如くですね。人は、使命を感じるときに、ヤル気が沸き起こります。あなたのお店の理念に基づいて、スタッフ一人一人の役割が明確になり、その仕事をする事によって、自分が、お店の為に、社会の為に、役に立っているという実感を持つということが必要です。
これに関しては、朝礼、終礼の際に、スタッフ全員で、理念の復唱とその理念に対して今日は、何ができるか?何をすることが出来たか?をしっかりと確認しあってください。
このことに関しては、正社員であろうが、アルバイトであろうが関係ありません。末端まで、しっかりとお店の理念が伝わるためには、待遇による扱いに差があってはなりません。
次に大事なことは、お店の目標の達成が、スタッフ一人一人の夢を叶えていくために、必ず役立つと、スタッフ一人一人が認識する必要があります。
スタッフは、お店のためだけに頑張れと言っても、なかなか頑張ってくれません。お店だけでなく自分の為にも、その経験が役に立つと感じてくれない限り頑張りません。
そのためには、経営者であるあなた自身が、スタッフ全員の夢や目標を把握しておかなければなりません。
頑張れない理由 「何をやればいいのかわからないと頑張れない。」
「できる!というイメージが持てないと頑張れない。」
「誉められないと頑張れない。」対策法
これらは、まさに頑張れと言うだけでは頑張れない象徴のような理由です。
何の為に、その業務を行い、いつまでに、どのような成果を期待しているのか?
しっかりと伝える必要があります。
その業務が、目標に近づく為に、いかに大事な業務かを知らせる必要があるのです。そこまで理解をしてもらってから、業務指示を具体的に、分かりやすく出すようにしましょう。
さらにこれらの頑張れない理由を解決するためには、スタッフが、自分自身を信じる必要があります。こういったできるかも知れないという、自分に対しての自信は、「有能感」というものを感じたときに芽生えます。有能感は、一言でいうと、「自分の成功を信じる力」です。
この有能感を育てる為には、達成感の反復を何度もさせることが不可欠です。
細かい目標を何度も、何度も達成しながら、何度も何度も褒められながら、目標に向かって一歩一歩進んでいくことを実感したときに、自分にもできるかもしれない、もっと頑張ろう!というエネルギーが沸いてくるのです。
「すげぇ!すげぇ!の法則」とも呼んでいますが、少しの目標でも達成することを何度も何度も繰り返す、達成するたびに「すげぇ!」とさけび、「すげぇ!」といった数に比例して、人は成長していきます。大きい成功1回より、小さい成功すげぇ!100回です。
頑張れない理由 「正しい評価をしてもらえないと頑張れない。」
「給与が低いと頑張れない。」
「いつまでも同じ仕事のレベルでは頑張れない。」対策法
これは、どんなに頑張っても、自分にとって具体的なメリットが無いときに発生します。理念の浸透、お店とスタッフの夢の一致、その次は、適正な評価です。
給与を上げるというのも余裕があればできますが、人は、給与を上げてしまうと最初は喜び、モチベーションもあがるのですが、それが段々と当たり前になり、モチベーションは継続しません。目標達成時は、どちらかというと、お店スタッフ全員に対して、そしてMVP賞などを決めて個人に対しても、ご褒美として用意したほうがいいかもしれませんね。ご褒美に関しては、スタッフ全員と決めて見ても面白いかもしれません。
どんなご褒美が、スタッフのモチベーションを上げる事ができるか、判断するのも、経営者であるあなたの腕の見せ所ですね。
よく経営者が口にする「最近の若者は、長続きしない・・・」という愚痴は、
同じ事をずっとさせていることが原因で発生している問題かもしれません。
できれば最低3ヶ月に一度、スタッフの評価をチェックしスタッフの成長を確認し、適正な評価、公平な評価を行うように心がけてください。
頑張れない理由 「どこまでやればいいのかわからないと頑張れない。」
「いつまでにやればいいのかわからないと頑張れない。」
「納期間近にならないと頑張れない。」対策法
この3つは、ゴールである目標が明確にされていないから起こります。サッカー選手が目指すべきゴールを見失っている状態です。あっち?こっち?これでは、試合になりません。
計画した目標をスタッフ全員と共有します。そして、スタッフ自身の目標もしっかりと決めないといけません。このとき大事なことは、しっかりと期限を決めるということです。
店舗運営に関しては、「期限のない目標」は何も無いのと一緒です。お店のゴールと個人のゴールを、経営者はじめ、スタッフそれぞれが互いに意識し、励ましあいながら、店舗運営をする必要があります。
スタッフ個人が、目標をたて、自らの活動を振り返り改善する。そのためには、毎月1度、スタッフ同士のミーティングを行い、今月の活動の評価を自分で行い、来月の目標を立てる機会を設けることが重要です。
最後には、スタッフ同士で発表しあい、自分と、スタッフ同士での目標管理ができるようにするとなお、良いでしょう。
頑張れない理由 「人から押しつけられたことは頑張れない。」対策法
ここまで言い聞かせて、教えて、褒めて、自信を持ってもらったスタッフのヤル気をまたもや、一瞬で失ってしまう、経営者の魔の行動があります。それは、命令です。
「だまって俺の言う事を聞け!」
その言葉で、今までの苦労は水の泡になります。
店舗の主であるあなたの仕事は、意見を挟むことではありません。
物事を決定する、判断するときに、如何に現場のスタッフに意見を言わせるか?
ということが大事なことなのです。答えや施策に理想型はあっても、それをおしつけてはいけません、あくまでスタッフに主体性を持ってもらうことが大事な事なのです。
それぞれの意見を尊重し、スタッフ全員で決めていくということは、スタッフが、経営に参画しているという意識を持つことになります。その結果、主体性、責任、モチベーションを向上させ、維持させる絶大な効力があるのです。
頑張れない理由 「時には叱られないと継続して頑張れない。」対策法
(経営者はスタッフの意見を聞きすぎるな!)
頑張れない理由の最後は、この理由です。
スタッフの意見をしっかり聞きましょうとお話しましたが、スタッフの愚痴や不満を聞きすぎると大変な事になります。
そのスタッフの発言は、意見か不満か?この二つを適切に判断する必要があります。
意見であれば、しっかりと受け止め、もしその発言が、不満や愚痴なのであれば、断固として叱り、考えを改めさせなければなりません。
しかしその境界線は難しいものです。ここでも、あなたが最初に決めた経営理念が役に立ちます。あなたの価値感からではなく、その経営理念から、外れていれば愚痴!経営理念に則っていれば意見です。
もっと簡単に言うと、お店を良くしたいと思ってスタッフの口から出ている発言は意見です。しかしながら、スタッフが自分の事を主体として発言しているのは愚痴です。
よく怒ると叱るとでは違うと言いますね。怒るとは、自分の感情に任せての発言。相手のことを考えていません。ただ、自分の気を満足させるための発言であると考えています。
それが、スタッフの愛情から発しているものであれば、必ずそのスタッフの心にも届きます。叱るのが苦手な経営者もいると思いますが、この「怒る」と「叱る」の区別を、しっかりとつけて発言できれば、本当の経営者と言えるでしょう。
スタッフの本当の満足は、自分の為に真剣に怒ってくれる。間違っていることを、間違っていると指摘してくれる。本当の仲間と一緒に働くことによって得られます。
スタッフの不満や、愚痴を見つけたら、すぐに叱りましょう。お店の為にも、経営者であるあなたの為にも、そのスタッフの為にも、よくありません。これもお金の出入りと一緒です。最初は小さな、小さな穴でも、ほころびだすと、もう止めることはできません。大きな穴に変わってしまいます。
勇気を出して、スタッフを叱ってみてください。それができるかできないかが、必ず、あなたのお店を蘇らせる重要な分岐点になることでしょう。