皆様は、自店の事業計画というものを立てた事がありますでしょうか?そう聞かれると、開業時、開業資金融資のために、事業計画を立てたことがあるという方はけっこういらっしゃるかもしれません。しかしながら、毎年、1回事業計画を立てている経営者の方は、意外に少ないのではないでしょうか?大企業では、当たり前のように毎年立てている事業計画は、中小企業でも必ず必要な経営のポイントになります。
今回は、その事業計画の大切さについてお話していきたいと思います。
まず、始めに、融資を受ける際に提出する事業計画と、経営において大事な事業計画とは、まったく種類が違う事を明言しておきたいと思います。
融資を受ける際に提出を求められる事業計画は、大体の場合において、過去の数字経緯について問われます。どういうことかと申しますと、銀行などの機関は、その経営者が、本当に貸したお金を返すことができるのかどうかを判断することが仕事です。その商売が、うまくいく、繁盛していくかどうかを見ているわけではありません。経営者の返済能力を判断しないといけないときに、未来の数字をいくら魅力的に見せても、通用しませんね。
やはり、過去その人の貯蓄経緯や、どのようにして、開業資金を貯めたのか?過去に支払いを滞ったことはないのかどうか?そして、過去どのような仕事を経験して、新規開業に至ったのか?こういった部分を重点的に見られます。ですので、私は融資を目的とした事業計画を立てる場合には、過去の徹底分析から、将来の返済できるという信用を勝ち取るための、担保を提示することをお勧めしています。
しかしながら、本当の経営のための事業計画とは、今までにお話した融資を目的とした事業計画の立案とは、まったく異なります。経営のための事業計画の立案は、徹底的にこれから先の未来についての数字を決定していく作業になります。事業計画としましては、よく、短期・中期・長期と別れていますが、最低でも毎年、中期(中小企業であれば5年後)までの計画をきっちり立てることをお勧めします。
事業計画を立てて、何かいいことがあるの?という質問が聞こえてきそうですが、本当に色々とメリットがあります。まず、5年先の自店のあるべき姿から逆算することによって、4年後、3年後、2年後、1年後、半年後、3ヶ月後、1ヶ月後、15日後、明日、自分たちが何をしなければいけないのかが明確になります。これを逆算で考えていない限り、その日その日の単なる積み重ねになってしまい、5年後のあるべきだった姿には程遠いという結果になってしまいます。
イチローみたいな天才であればまだしも、私のような凡才は、やはり、逆算で目標を立てて、毎日それを振り返り軌道修正しながら、まずは、5年後のあるべき姿を目指さなければなりません。
よく、目的と目標の違いについてお伝えする機会がありますが、目的とはマラソンに例えると、ゴール42.195キロまで何時間何秒でたどり着くこと。目標はその間、10キロ地点で何分、折り返し地点で何分、30キロ地点で何分?と中間地点での標を立てることになります。いきなりプロのランナーでも、この計画を立てずに、やみくもに、フルマラソンを走れと言われても、なかなか走ることができないそうです。
上手な目標を立てるという事は、その人間のモチベーションにも非常に影響します。10キロ地点を少し計画よりも遅れたので、次の区間は、想定よりも速いペースで走らないと目的を達成することができないな、など、そういった事を考えながら、さらに、必死に走っていても目標地点がないために、一体いつになれば、ゴールにつくのか想定できないという環境は、考えるだけでお気の毒です。これは、笑い話のように思いますが、店舗経営において、同じ間違いを犯している経営者はとても多いのです。
経営者が運転手で、スタッフを連れて慰安旅行に向かうと決めたとします。バスをチャーターして、あなたはスタッフを載せて走り出します。しかしながら、目的地を告げない、いつになれば到着するかも言わない、何のために走り出しているのか?も言わない、そうなると、乗っているスタッフは本当に不安になると思います。経営者にとっては、慰安旅行でも、スタッフにとっては拉致です。これも経営者が陥る失敗の一つですが、やはり、同じバスにのって、同じゴールに向かって働く仲間であるスタッフに、自店の経営計画を発表することは、絶対に必要不可欠です。
そういった目標を、スタッフ全員と共有するからこそ、そこから、そのゴールのためにどうすればいいかという知恵が生まれます。目的、目標も語らずに、スタッフに素晴らしいパフォーマンスを求めるのは、土台無理な話です。計画を立てたからといって、必ずしも達成しなければならないというわけではありません。1年もしくは半年などの期間に、何度も見直せばいいのです。
大事なことは、目標を達成するということよりも(もちろん達成することも大事ですが)、目標を、働く仲間と共有するということなのです。そういうことが自然にできているお店は、スタッフも自分の使命のもと生き生きと働いています。こういったところにも、繁盛しているお店とそうでないお店の分岐点がありますね。