大阪の中心地「梅田」駅前には、大丸・阪急・阪神百貨店が、立ち並び、その地下ではいわゆる「デパ地下」と呼ばれる食品店街が凌ぎを削っています。その中で一段と目立つ行列。売り場は場内の隅にある、小さなコーナー。先頭を見てみると、「クリームパン105円 お一人様5個まで」
スタンダードなアイテムを店の売りにできる強さ
私は以前、リテールベーカーリーの経営支援を行っていた際に、尼崎に日本で初めて“カスタードクリームによるクリームパン”を、日本で初めて商品化したお店があるということを聞いていました。
お店の名前は、「バックハウスイリエ」。そしてそのクリームパンは、クリームがぎっしりで、普通はパンの重さが約80グラムに対して、大きさそのままで、約130グラムもあるというのです。
クリームパンって結構、作るの難しいんですよ
経営支援をしていた際、人手不足でパンの成形も手伝ったことのある私は、パンの中にゆるいカスタードクリームを目いっぱい入れて焼き上げるのは非常に難しいということを知っていました。
何かの機会があれば是非食べてみたいなと思っていました。そんな記憶が蘇り、この行列はきっとその店に違いないと思い、滅多に行列には並ばない主義なのですが、思わずその行列の最後に並んでしまいました。
行列は、やっぱりそそられる
しかし、20分くらい並んだ挙句に限定数が終わりましたので、次回販売時間にということで断られてしまいました。
一日に3回販売開始時間があるようで、意地にもなった私は、次回の販売時間に合わせてかなり早い段階から並び、そのクリームパンを購入しました。
パンの生地は本当に5ミリくらいの薄さしかなく、ずっしりとした重量感で、食べてみると全くしつこくなく、このクリームの量に正にちょうどいい甘さで、二つくらいぺロッと食べてしまえる、この味には感動しました。
梅田の地下を通るときには、ついつい、毎回そのクリームパンを求めて行列に並んでしまいます。
行列にだまされることも多々あります
私は仕事がら、行列ができているお店には一応並んでみて自分の体験でその繁盛している要素を確かめてみるという習慣がありますが、その経験の中で、正直行列を作るほどのお店ではないかもしれないと感じることもしばしばあります。
いわゆる行列が、行列を呼んでしまうという状態。それから以前は味やサービスがとても良くて噂になったけれども、今はその品質が落ちてしまって噂だけが一人歩きしてしまっているケースも多々見受けられます。
私は平素、お金をかけずに繁盛店に変える為には、「口コミ」による集客を行えるお店の経営体質を作ることにあるとお伝えしています。
ブランド=人×商品×ストーリー
この「バックハウスイリエ」の入江正文オーナーシェフは、職人暦35年の職人一筋の人。日本で初めてカスタードクリームパンを商品化し、その商品自体は、カスタードクリームたっぷり、にもかかわらず、味はしつこくなく130グラムのビックボリュームでもペロっと一つ食べる事ができる。
商品・サービス、人物、物語(ストーリー)が揃うと口コミが発生する。この三大要素をしっかりと抑えているお店と言えます。
期待をさせると、普通でもクレームになる、期待を上回るにには?
さらに期待値以上の商品・サービスを提供することによってこの口コミが継続するのです。評判のお店というのは、否が応でも期待値が高まります。
その期待値を上回る商品・サービスを提供しないと顧客はリピートしません。そして品質を守るために、販売数を限定するということもそのこだわりを感じることができます。
小手先のテクニックではなく、本質を追求している想いは、自然と顧客に伝わり、ついつい買う気が起こってしまう。それが集客の本質なのかもしれません。